Barbershopってどんなアカペラ?

どうも皆さんこんにちは!
普段coiffeur(コワフュール)というバーバーショップカルテットで歌っているたっきーと申します。

突然ですが皆さん、Barbershopというスタイルのアカペラをご存知でしょうか?
何それバーバーショップ?散髪屋??と思った方、あーなんか時々見かけるあの伸ばすやつね!と思った方……今日はそんな皆さんに、バーバーショップの魅力についてざっくりとご紹介したいと思います。

そもそもBarbershopって何?

そもそもこれを読んでいる読者の皆さんには、バーバーショップという音楽をそもそも知らないという方もいると思うのでまずは軽く説明から。

barbershopとは日本語にすると床屋さんという意味。

その名の通り19世紀のアメリカの床屋さんで生まれたスタイルのアカペラなんですが、当時は今のようなスマホはもちろんテレビすらない時代。かわりに床屋さんが街の社交場的な場所になっていたそうで、バーバーショップの起源についてはその床屋さんに仕事が終わった男たちが集まって歌っていたとか、床屋さんの客寄せのために店先でカルテットが歌っていたといった説などがあるようです。

アカペラの中では比較的男声合唱寄りの性質が強いこともあって、
日本ではどちらかというと合唱団の中で4人集めて歌うといったパターンが多かったんですが、
最近になってアマチュアアカペラ界でもバーバーショップ人口が徐々に増えてきています。

とはいえ、日本ではまだまだマイナーな部類に入りますが、
本場のアメリカでは毎年世界大会も行われていて、実は結構盛り上がっていたりするんですよ。

Barbershopってどんなスタイルなの?

バーバーショップのスタイルはコーラス(合唱団)形式とカルテット(4人)形式に大きく分かれますが、おそらく最も目にする機会が多いのは男声4声のカルテット。
上からTenor, Lead, Baritone, Bassというパート名が割り振られています。
ちなみに混声や女声カルテットもありますが、その場合も同じパート名を使います。

  • Tenor:いわゆるTop。かなり高めの音域まで広く使うので高音をしっかり鳴らせる人が向いている。
  • Lead:その名の通り主旋律を歌うことが多いパート。
  • Bass:ベースではありますが、一般的なアカペラのベースとは異なりコーラスの一員的な動き方をすることが多いため使う音域も幅広く、時々ト音記号ゾーンに突入することも。
  • Baritone:いわゆる3rd的な立ち位置ですが、おそらく一番難しいパート。他のパートが歌わない音を全部拾った結果かなり意味不明な音符の動き方になることが多く、Bariの人たちはしばしば自分たちのパートを自虐的に“Garbage Part”=ゴミパートと呼んでいたりいます。(が、Baritoneを担当しているのは大抵そういうのが好きな人です。笑)

Barbershopの魅力をおしえて!

一番の見せ場“Tag”

なんといってもバーバーショップの一番の特徴と言えるのが“Tag”=タグと呼ばれる非常に印象的なエンディング
多くの場合“Hanger”=ハンガーと呼ばれるロングトーンを一人が15〜30秒くらい伸ばし、その間に残りの3人が複雑な和音進行を解決してドラマティックに曲が終わる、という演出が行われていて、バーバーショップといえばロングトーン、というイメージを持っている方も多いかもしれません。
(※ちなみに実はロングトーンがない曲もちゃんとあります)

説明ばかり聞くのも飽きてきたかと思うので早速聴いてみましょう。

この動画の1:36あたりからがいわゆるTagの部分。
自分自身これを初めて聴いた時にはとてつもない衝撃を受けたんですが、
このタグこそがバーバーショップの一番の見せ場であり、
歌う側としても最後まで気が抜けない反面、ここがかっこよくキマった時の気持ち良さは他のどんなアカペラでも味わえない一番の魅力なのです。

ちなみに、有名な曲ならぬ『有名なタグ』はバーバーショップ界のある種の共通言語のようになっていて、バーバーショップシンガーたちが集まると『Go The Distanceのタグ歌おうぜ!』みたいにいろんな曲のタグだけを即興で歌っている異様な風景がよく見られます。

他にもアレンジには個性的な要素がたくさん

バーバーショップのアレンジの特徴はタグばかりが注目されがちですが、他にも

  • これでもかというほど7thの和音が登場する
    →コンテストで歌われるような楽譜では、7thの和音が全体の30%以上を占めていることも…!(※7/28 一部不正確な表記があったため訂正しました)
  • 全字ハモが多い
    →普通のアカペラよりも全員で歌詞を歌うことが多く、ベースがベース単体で動くことは比較的少ない
  • 和音を鳴らしながら上下にスライドさせたりする“Swipe=スワイプ”
    →転調の時に使いがち

など、独特の個性があって、アカペラのアレンジをする人はいわゆる普通の4声アカペラと聴き比べてみるといろんな発見があるかもしれません。

Barbershop編曲家の楽譜をいろんなカルテットが歌う文化

また、アマチュアアカペラシーンではたとえばゴスペラーズやThe Real Groupといったプロのアレンジをコピーして使ったり、あるいは自分たちで1から編曲することが多い中で、バーバーショップの場合は自分たちでアレンジをするといったことは少なく、バーバーショップの編曲家が作った一つのアレンジをさまざまなカルテットが歌うのが一般的。合唱の世界に近い文化といえば分かりやすいかもしれません。

そのため、同じ曲でも歌うカルテットによって響きの作り方や音楽のアプローチが全く異なっていたりして、そうした同じ楽譜だからこその個性の違いを聴き比べてみるのも楽しかったりします。

さっそくBarbershopを聴いてみよう

というわけで、ここからはバーバーショップの動画をいくつかご紹介しましょう。

Vocal Spectrum – Go the Distance

いくつかの世界大会で何度もチャンピオンの座を勝ち取ったバーバーショップ界で最も有名なカルテットのひとつ、Vocal Spectrum
ゴリゴリに鳴りまくる厚い倍音、そしてTenorのTimさんの人間やめたんじゃないかと思うくらいの超絶ロングトーンはいつ聴いても圧巻の一言。

このGo The Distanceはもともとディズニー映画・ヘラクレスの挿入歌だった曲をバーバーショップ界の著名な編曲家の一人であるAaron Dale氏がアレンジしたもので、中盤以降の展開が本当にドラマティック。
この曲を歌いたくてバーバーショップを始めたけど初心者がうっかり手を出すと難易度も音域も高すぎて盛大にコケる、という経験はバーバーショップシンガーあるあるなのではないでしょうか。ちなみに自分もその一人です。

(※7/28 編曲者をDavid Wright氏と紹介しておりましたが、正しくはAaron Dale氏の誤りでした。お詫びして訂正いたします)

Lemon Squeezy – Pass Me the Jazz

こちらは2012年に世界大会の学生部門でチャンピオンに輝いたスウェーデン出身のカルテット・Lemon Squeezyが演奏するPass Me the Jazz。(※7/28 より正確な表記に修正)

アカペラ界ではThe Real Groupが歌っていることでおなじみの曲ですが、バーバーショップのスタイルで歌うとまただいぶ違った雰囲気になりますね。

The Vocal Majority – Joshua Fit the Battle of Jericho

ちょっとした余談として、さっきバーバーショップにはコーラスとカルテットの2種類があると書きましたが、せっかくなので大人数のコーラスになるとどんな感じなのかもご紹介します。

Joshua Fit the Battle of Jericho=ジェリコの戦いという勇ましい曲ですが、特に大人数のコーラスだとこうした振り付けを交えて歌われることも多くなかなか迫力がありますね。

Ringmasters – Notre Dame Medley

そして昨年バーバーショップ界で一大旋風を巻き起こしたのがこのスウェーデンはストックホルム出身のカルテット・Ringmastersが歌うNotre Dame Medley。

ディズニー映画『ノートルダムの鐘』の名曲を繋げたメドレーで、途中のOut Thereの終盤のロングトーンで曲が終わるかと思いきや、さらに怒濤のラストを一気に畳み掛ける展開は圧巻の一言。まるで7分間の映画一本を見ているかのような聴き応えたっぷりの一曲です。

最後に

そんなわけで、今回はバーバーショップというアカペラの魅力についてお届けしてきました!
皆さんそろそろバーバーショップが歌いたくなってきた頃なのではないでしょうか…笑

そうはいってもこんなにロングトーン伸ばせないし…という声も聞こえてきそうですが、そこまで長いロングトーンが無い曲もありますし、Barbershop Tagsといういろんな曲のタグだけを大量に掲載した超お役立ちサイトもありますので、ぜひ、身近な仲間たちとバーバーショップにトライしてその楽しさを味わってみてください!




3 件のコメント

  • 7thが使用されなければいけない割合は私の記憶では7割以上のはずであるし、
    Go the distanceの編曲者はDavid Wrightではなく、Aaron Daleであり、
    2012年の優勝者はRingmastersで、Lemonではない、なんならLemonは国際大会でまだ優勝したことはない(最高2nd place)

    こちらに訂正していただきたい

    • >>barbershop オタク さま
      コメントありがとうございます。ご指摘いただいた内容について回答させていただきます。

      ・7thの占める割合について
      30%という数字についてはBarbershop Harmony Societyの公式サイト(http://www.barbershop.org/intro-to-barbershop-what-is-barbershop/)において
      >The signature “barbershop seventh” (1-3-5-7) chord appears frequently in barbershop arrangements, and in contest-suitable music, might constitute more of thirty percent of the chords in a song.
      と紹介されているのですが、確かに30%以上という要件を示すものではなく表現として正しくないものになっておりましたため訂正しました。
      ちなみに70%以上というのは自分自身も以前噂で耳にしたことはあるのですが、調べてみてもそれらしいソースが出てこないのに加え、過去のバーバーショップに関する文献にも
      >Society arrangers believe that a song should contain anywhere from 35 to 60 percent dominant seventh chords to sound “barbershop” — and when they do, barbershoppers speak of being in “seventh heaven”.
      (Gage Averill, “Four Parts, No Waiting: A Social History of American Barbershop Quartet”, 2003, pp.163)
      こうした記述があることを踏まえると、(仮にドミナント以外の7thコードを含めた数字だとしても)本当に7thが70%以上を占めることが要件になっていた大会があったのかは個人的には若干懐疑的ではあります。。

      ・Go The Distanceの編曲者について
      こちらについては以前からずっとDavid Wright氏だと完全に思い込んでいたのですが、ご指摘の通りAaron Dale氏の誤りでした。大変失礼いたしました。

      ・Lemon Squeezyの優勝歴について
      Lemonの2012年の優勝についてはCollegiate World Championship in Barbershop(現在はYouth Barbershop Quartet Contestに改称)でチャンピオンに輝いた時のことを指しているのですが、一般大会との混同を避けるためより正確な表記に改めました。

      以上の点を踏まえて記事のほう加筆・訂正しましたのでご確認ください。
      このたびはご指摘ありがとうございました。

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